●今も生きている透徹した真理の言葉に出会える。

高僧に学ぶ自戒のことば108
生き方を迷わぬための―

荒 了寛著 A5・127頁 定価1,890円 ISBN4-8170-8089-2

 「君看よ双眼の色、語らざれば憂い無きに似たり」良寛。こ
の二つの瞳をご覧なさい。何も語らなければ、何の苦しみも悲
しみもないように見えるでしょう。しかし、人はみな誰にも語
れない苦しみや悲しみをもっているものですよ。
 「しるべし、愛語は愛心よりおこる。愛心は慈心を種子とせ
り」道元。人を愛する言葉は、愛の心からおこる。愛の心は慈
しみの心を種子として起こる。

 「生ぜしもひとりなり。死するも独りなり。されば人と共に
住するも独りなり」一遍。生まれたときも一人、死ぬときも一
人である。だから他の人と住んでいるときも一人である。
 人が生きていくには、苦労は絶えない。四苦八苦という言葉
はよく使われるが、仏教の言葉だ。「生老病死」の四つを始め
とするいろんな苦しみを、だれでもが背負っていく。この煩悩
を消すには八つの方法があると、お釈迦様は教えてくれている。
それは八正道(はっしょうどう)である。「正」はすべて「しょ
う」と読む。
 @正見…正しくありのままに見る。A正思…正しい思考、思
惟、判断。B正語…言葉を正しく使う。悪言妄語を慎む。C正
業(しょうごう)…正しい行動。D正命(しょうみょう)…正しい
生活をし、欲望を慎む。E正
精進…向上心をもって努力。F正念…正しい信念をもつ。G正
定(しょうじょう)…正しい精神統一をし、物事をよく観る。

 この順序で、それぞれ八つの正道に配して名僧などの言葉
108を取り上げ、解釈を加えた。取り上げたのは、
道元、最澄、源信、日蓮、空海をはじめ一休、一遍、聖徳太子、
親鸞、明恵、良寛などの38師。加えて個々に著者筆の肖像画
などの挿絵を入れ、英文意訳を添えた。
 これらの句は是非口に出して読んでみる、声に出して朗々と
繰り返し唱えてほしいと奨める。そうすれば自ずから体で理解
できるようになるだろう。
 まずはひとつ、ピンとくるものを選んで、大きな声で読んで
みたい。何百年経とうが、これらの言葉は、そのままで現代に
通用する力をもっているのがわかる。
●あら・りょうかん 天台宗ハワイ開教総長。1973年開教。
傍ら、ハワイ学院日本語学校、ハワイ美術院などを設立。日本
文化の紹介と普及に努力。さらに独自技法の仏画による展覧会
を日本と米国各地で多年開催。1928年福島県生まれ。大正大
学大学院で天台学を専攻。